JUNKAN Museum 循環ミュージアム

クリエイターが描く「循環」
多様な視点、思想、表現から見つめる「循環」は、こんなにおもしろい!

アーティスト

山﨑萌子

8/11

作品の写真
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宮古島での制作の様子の写真

土地に呼応して循環の一部を写しとる。被写体と共鳴する、手漉き紙の探求

与那国島と東京を行き来しながらの制作活動をはじめて、4年ほどになります。写真を撮りながら、その写真を印刷する紙の表現を探求しています。与那国島以外に、宮古島や台湾などでも滞在制作する機会がありました。滞在期間は、2週間から最大で3ヶ月ほど。新鮮な気持ちを大切にしているので、たとえ居心地がよくても、定住することはありません。その土地の風や匂いを感じ、素材の感触を確かめ、自然と深く関わりながら過ごすことが、創作活動に大きな影響を与えてくれます。

作家活動の大きな転機となったのは、2021年に旅行で訪れた与那国島での体験です。島では、伝統的な民具作りを体験する機会があり、島草履を作らせてもらいました。草を刈り取るところからはじまり、編み方を習う。そんなものづくりの体験と、島で過ごす時間が心地良く、気がついたら2ヶ月も滞在してていました。

島に自生している植物や馬糞を利用して、自分で紙を作れないか。そんな想いから紙への探求がはじまりました。島の風景や野生馬の写真を撮っていたので、印刷する媒体である紙も、島の素材で表現したいと思ったのです。与那国島には、もともと紙の文化が存在しなかったので、材料の選定から作り方まで自分で探し求める必要がありました。制作は、トライアンドエラーの連続。タイの紙漉き工房の技法をYouTubeを観て真似たり、日本各地の工房を訪れて、紙漉きの技術や文化を学びました。馬糞を原料にした紙を作ろうとするも上手くいかず、島に自生する糸芭蕉という植物の繊維を混ぜ込むことで、当初理想としていた紙が完成しました。
与那国島を旅した理由の一つに与那国馬の存在があります。野生馬が生息する区画があるのですが、何度かそこへ通っているうちに、彼らの死に遭遇しました。死後数日でウジ虫がわき、菌類によって分解されていく。日ごとに朽ちていく様子を目の当たりにして、シャッターを切りました。不思議と死に対する怖いという感覚はなく、その佇まいに畏敬の念と美しさを感じました。
自然へと還っていく馬。そして紙に変容した馬糞も循環の一部です。馬が牧草を食べ、体内から排出された糞は堆肥となって土を肥やし、新たな草を育み、また馬の餌となる。島にいると、そんな自然の循環の現象に遭遇し、五感でその巡りを感じ取ることができます。

最近は、従来の写真作品の枠を超え、新しい表現に挑戦しています。島で獲れた甲烏賊の墨を使い、描いた作品を発表しました(作品写真4、5枚目)。それらの中には、雨や波の作用を加えたものもあります。今後は、烏賊墨だけでなく、より一層海草などの海の素材を用いた作品も制作したいと考えています。

山﨑萌子さんの写真
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山﨑萌子

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