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ゴミを出さない町の「ゼロ・ウェイスト」現場体験記

Index

  1. 一泊二日で使う石鹸の量って、どのくらい?

  2. 「野焼きの町」から、自主リサイクル先進地に

  3. 楽しさを入り口に、環境への気づきを広げていく

  4. 世界へひろがるゼロ・ウェイストの輪

  5. 循環を体現する社会を実現するために

880グラム。これは日本で暮らす人が1日に出す廃棄物、つまり「ごみ」の量の平均値です。日本全体だと、1年間でおよそ4,034万トン。東京ドーム108杯分もの量になります(※)。そのうちリサイクルされているのは20%ほど。約80%はごみとして焼却されているそうです。
そんな現状を、より良くするために取り組んでいる自治体のひとつが、徳島県上勝町です。2003年に日本ではじめて「ゼロ・ウェイスト宣言」を発表。その言葉通りごみゼロを目指すというもので、2020年には町としてのリサイクル率80%オーバーを実現しました。そんな町にある複合施設〈上勝町ゼロ・ウェイストセンター“WHY”〉には、日々町民が自らごみを捨てに訪れ、43種類もの分別を能動的に行うだけではなく、他に類のないユニークな宿泊施設を併設し、建築として、体験として、ごみと人との新しい関わり方を提案しています
今回、上勝町へ取材に向かったのは、大阪・関西万博〈日本館〉のデザインの領域を担当する色部義昭と、言葉の領域を担当する渡辺潤平のふたり。一泊二日の宿泊体験を通して、上勝町が実践する「ゼロ・ウェイスト」の考え方について、現場で実際に活動している方々のお話を伺いながら、日本館の掲げる「循環」のあり方にヒントを見つけてみたいと思います。

※)環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について」より。1人1日当たりの家庭系ごみ排出量は496グラム。

一泊二日で使う石鹸の量って、どのくらい?

徳島阿波おどり空港から、車で山道をたどって1時間と少し。〈上勝町ゼロ・ウェイストセンター〉は、四国山地の緑に囲まれた場所にあります。家庭や企業から排出されたごみを集積する〈ゴミステーション〉、住民が集まれる〈交流ホール〉、宿泊体験ができる〈HOTEL WHY〉、町民が不要になったものをリユースするための〈くるくるショップ〉などから構成されています。

一般的なホテルとは異なり、チェックイン前にスタッフによる「ゼロ・ウェイストアクション」の宿泊にあたってのガイダンスがあります。今回は、同センターの「チーフ・エンバイロメンタル・オフィサー」(CEO)を務める大塚桃奈さんにご案内いただきました。

大塚

ようこそ、ゼロ・ウェイストセンターへ ! まずはお部屋へ向かう前に、滞在中に使う石鹸の量をイメージして、その分だけ切り分けてもらいます。色部さん、1人分の量はどのぐらいだと思いますか ?

色部

意外と難しい……。1人分だとこんなものかな ?

普通に暮らしていると、1日分の固形石鹸の必要量をイメージするような機会は、ほとんどありません。これは「必要な分だけを使う」というゼロ・ウェイストの基礎訓練なのでしょう。続いて大塚さんからふたりに、ごみ分別収集用のバスケットが渡されます。

大塚

ひと晩の宿泊で出るごみ、出がらしの茶葉やティッシュなどすべてのごみを、このバスケットに入れてください。明日、ゴミステーションで分別体験にご参加いただきます。

  • 固形石鹸をスライスしている色部さんとそれを横で見ている渡辺さん。大塚さんだけ立っており2人に何か説明をしている写真。
  • 固形石鹸をスライスしている様子のクローズアップ写真。
  • ショップに並ぶお皿を取ろうとしている写真。ショップにはお茶碗やお皿、徳利などが無数に並んでいる。

1枚目:左から〈上勝町ゼロ・ウェイストセンター〉のCEO・大塚桃奈さん、アートディレクター・色部義昭、コピーライター・渡辺潤平。/2枚目:1人分を予測しながらスライス。実はこんなに使わないということを翌日思い知らされる。/3枚目:〈くるくるショップ〉。ここでは、年に4〜5トンにも及ぶ家庭の不用品が新たな持ち主の手に渡って再利用される。

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ガイダンスを終えて、バスケットをホテルの部屋に持ち帰って思い思いに過ごすふたり。宿泊する〈HOTEL WHY〉は、使われなくなった窓をパッチワーク状にはめ込んだ壁面や、他の宿泊施設などから引き取った家具など、ごみを減らす思想とユニークな発想が共存している興味深い建物です。

小さなゴミ箱が入っているカゴの写真。「生ゴミ」と書かれた透明のケースのゴミ箱を手に持っている。
バスケットの中の分別用ごみ箱は6種類。「生ゴミ」「紙類、金属類」「きれいなプラスチック容器包装」「汚れているプラスチック・紙類・木材」「飲料ボトル」「どうしても燃やさなければならないもの」

ウッドデッキに椅子を出して夜風を感じながら、実際に飲む分だけ申告したコーヒーとお茶を丁寧に淹れて楽しむ。自分で出したごみは自分で分別してバスケットに入れることも忘れずに。過剰なものがないからこそ、自然との距離が近く、一つひとつの行為が新鮮に感じられます。

渡辺

ごみを過剰に出さないという意識を持って過ごすと、所作もきれいになるような気がしますよね。

色部

普段よりも丁寧に一つひとつの行動をしているという感覚。かといって、窮屈さはなく、むしろすごくおおらかな気持ちになるから不思議です。

翌朝、近所のお店から届けられた朝食をいただきます。日中は自家製ビールの醸造所を営むお店ですが、この朝食は地元の柑橘類とフィッシュカツに、焼きたてのパン。パンを包む紙袋や柑橘の皮も、あとでゴミステーションで分別します。

外でお弁当を食べている手元の写真。机にはお弁当と水筒、コップが置かれ、人物はパンを持っている。
柑橘は隣町である勝浦町特産の早生みかん。

朝食を終え、大塚さんと合流したふたりは、庭にあるコンポストのもとへ。スタッフが自作したという木箱に生ごみを入れて土を被せておくと、微生物があっという間に分解してくれるのだそうです。

大塚

箱の中には黒土が入っています。発酵は温かい方がよく進むので、太陽光が入りやすいように蓋は透明に。通気性も大事なので、閉めても密閉されないように傾斜をつけた設計にしています。黒土は6分割してあります。分解を早めるためには、1日ごとに入れる場所を変えるのがポイントですね。比較的分解しやすいものであれば、6日経つとほとんど見えなくなってしまいます。

細かくされたみかんの皮や番茶の出がらしなどを、コンポストである黒土の中に捨てている様子の写真。
大きいものや、繊維が硬いものは分解に時間がかかるので、スコップなどで細かく刻みながら入れる。

色部

朝食べた柑橘の皮も、番茶とコーヒーの出がらしも、そんな短期間で分解されて消えるなんて。

大塚

土に空気を触れさせると微生物の働きが活発になるので、定期的に土全体をスコップでかき混ぜることが大事なんですよ。上勝町では、生ごみだけはゴミステーションで集めず、各家庭のコンポストで処理してもらっています。生ごみは水分を含んでいるので腐りやすく、臭いが出たり、他の紙やプラなどの資源を汚してしまう可能性があるので、最初から分けているんです。1万円の自己負担で電動コンポストを購入できるよう、町から補助金が出ているんですよ。

渡辺

羨ましい取り組み。動物性タンパク質の生ごみはしっかり分解されるのか不安ですが、一緒に入れていいんでしょうか ?

大塚

肉などは同じように入れて大丈夫です。というか、むしろ微生物は好んで分解します。卵の殻や骨、貝殻はなかなか分解されないので、コンポストには入れないようにしています。

生ごみをすべてコンポストに埋めたら、ゴミステーションへ。手元に残ったごみは、ペットボトル、瓶、紙パック、ティッシュ、お菓子のプラ包装……わずかひと晩ながら、集めてみると意外と多いことに気づかされます。これらのごみが43種類のどの分別に当てはまるのかを大塚さんに教わりながら、それぞれの回収ボックスに収めていきます。

  • ゴミステーションに集められたさまざまなゴミを見て回る色部さん、渡辺さん、大塚さん。
  • シンクで紙のジュースパックを切っている様子の手元の写真。
  • 油汚れがついた茶色い紙を持っている手元の写真。
  • 搭乗券を持っている手元の写真。
  • ラベルが貼られた透明の瓶を見つめる色部さん、カゴから茶色い瓶を出して見つめる渡辺さんと渡辺さんに何か説明をしている様子の大塚さんらの写真。

1枚目:上勝町民が利用する〈ゴミステーション〉。町内のごみはすべてここに持ち込まれる。/2枚目:ジュースの紙パックは再生紙になるので、切り開いて水洗い。町民はこれを洗濯バサミなどで干し、乾かしてからゴミステーションに持ってくる。/3枚目:紙は、汚れがついているかによって回収先が異なる。油汚れがついている紙は再生紙にはできないので、固形燃料に。/4枚目:搭乗券やレシートなど、感熱紙も油汚れの紙と同様、再生紙にはできない。/5枚目:瓶は透明、茶色、そのほかの色に分けられ、色ごとにリサイクルされる。汚れがついていないペットボトルのラベルは、再生できる。プラスチックも汚れがついたものは固形燃料に利用される。

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中には、プラスチックや金属が混ざった頑丈なものも……。

大塚

入口付近のテーブルに置かれている、ライターやペン、傘。これらは分解を待っている状態です。できるだけ焼却される量を減らすために、あとでスタッフが分解作業を行います。ちなみに、今までで一番分解しづらかったのはマッサージチェアでした。部品や布がのりでしっかり固定されている箇所が多くて。

渡辺

頑丈であるということはそれだけ分解しづらいということですもんね。

大塚

上勝町では例えば瓶でも、注ぎ口にプラスチックがついているものは、すべてのパーツを分別して捨てています。ただ、例えばマニュキュアのように瓶の中に塗料が入っているものや、水槽のようにガラスとゴムが接着してあるものなど異素材同士がくっついていて分解しにくい場合は、再生することが難しいので焼却・埋立せざるを得ないんです。「どうしても燃やさなければならないもの・埋め立てなければならないもの」と書いてあるごみ箱は、いわば“最終手段”。上勝町はリサイクル率80%を達成していますが、裏を返せば20%はいまだ焼却・埋立に頼っています。ティッシュやマスク、おむつなど、衛生的な理由によってリサイクルできないものや、革製品、塩化ビニルやゴムなど素材として再生ができない製品がここにやってきます。

ゴミステーションの一角の写真。「どうしても燃やさなければならないもの」のゴミ箱の上には「出」という文字と61という文字が書かれた看板のようなものが付けられている。

ゴミステーションを見渡すと、ごみ箱の上にある値段が書かれた看板が目に付きます。

大塚

それぞれの看板の右上を見てもらうと、「入」「出」とあり、その横に値段が書かれています。リサイクル業者が買い取ってくれるものは「入」で、横にあるのが1キロあたりの売値。処理するのに町がお金を出さないといけないものは「出」で、1キロ当たりの処分コストが横に記されています。つまり再生しやすいものの方が、町にお金が入ってくるということですね。例えばアルミは9割が再生可能なので、この中で一番高い「入 160円」と記載されています。

色部

ごみの価値が、具体的な金額で置き換えられると身近に感じられますね。

「野焼きの町」から、自主リサイクル先進地に

今でこそリサイクル率80%を達成している上勝町ですが、30年ほど前まではごみ処理のルールが決まっておらず、山あいに穴を掘って、そこで野焼きが行われていたといいます。その状況から一変、日本初の「ゼロ・ウェイスト宣言」が出され、世界から注目される施設になるまでの道のりを、大塚さんが教えてくれました。

大塚

上勝町では、1997年まで「野焼き」が問題になっていましたが、同年に施行された「容器包装リサイクル法」をきっかけに、プレハブ小屋のゴミステーションを設置しました。当時から住民がごみを持ち寄るスタイルで、9分別からスタートしました。ゴミステーションは「野焼き」が行われていた場所のすぐ隣だったので、住民にとってごみの持ち寄りはハードルの高いことではなかったそうです。
翌98年には焼却炉が導入されたのですが、ダイオキシンの問題で2年で閉鎖。人口減少が進んでいた上勝町は、ごみ処理にお金をかけるよりも資源化してごみ自体を減らしていこうという方向に舵を切りました。そこから、町の担当者は、リサイクルについて熱心な調査と住民への説得を続け、2001年には35分別を実現したそうです。

人口の少ない町だからこそ、住民と顔の見えるコミュニケーションを取ることができたんです。当時の笠松町長による改革意識とリーダーシップもかなり大きかったと聞いています。2003年には、アメリカでゼロ・ウェイストの取り組みを行っていたポール・コネット博士が町を訪れています。そして、同年には笠松前町長によって「2020年までに焼却・埋め立て処分をなくすために最善を尽くします」という「ゼロ・ウェイスト宣言」が出されました。そして2005年には、一般社団法人ゼロ・ウェイストアカデミーが立ち上がり、ゴミステーションの運営とゼロ・ウェイスト推進を目的とした住民や町内事業所との丁寧な対話に取り組みました。

ゴミステーションの壁に貼られた案内を読む色部さんと渡辺さん。2人に何か説明をしている様子の大塚さんらの写真。

2020年、プレハブ小屋だったゴミステーションは〈上勝町ゼロ・ウェイストセンター〉に生まれ変わり、〈HOTEL WHY〉が営業を開始。その立役者となった、センターの代表取締役である田中達也さんにもお話を伺います。もともとは徳島市内で衛生事業を営んでいた田中さんは、徳島の人口減少に危機感を覚えていたそう。

田中さんの写真。椅子に座って話している。
〈上勝町ゼロ・ウェイストセンター〉創設メンバーで〈RISE & WIN Brewing Co.〉代表の田中達也さん

田中

僕が上勝町のお手伝いをするようになったのは、2011年。笠松前町長から「町おこしに協力してくれないか」と声をかけていただいたのがきっかけです。外部の僕には、35種類の分別や高いリサイクル率は、ものすごい驚きだった。町外にもこの取り組みを伝えようと説得し、ゴミステーションもリニューアルすることになりました。若い人たちがこの町に来たくなる仕組みをつくらないといけないと考え、2015年に自家製ビール醸造所〈RISE & WIN Brewing Co.〉をオープンし、2020年にはゴミステーションを公共複合施設にリニューアルした〈上勝町ゼロ・ウェイストセンター〉をスタートするなど、積極的に町の魅力を発信してきました。

以来、〈上勝町ゼロ・ウェイストセンター〉は、ごみの課題を扱う場所でありながら、人々を惹きつける魅力を持った場になりつつあります。町民がゼロ・ウェイストの取り組みを自分たちの生活ルーティンに組み込むようになった背景には、もちろん、町長のリーダーシップや役場職員とゴミステーションスタッフの丁寧なコミュニケーションがあったのでしょう。しかし、理由はそれだけではありません。

田中

上勝町は、県内を流れる勝浦川の最上流に位置します。農業にしても排水にしても、この町の人たちは「上流で起きたことは下流に影響する」ことを経験してきて、その意識が根付いているんです。だから自分の出したごみを自分たちで処理する、という考え方がすんなり浸透していったのだと思います。

「資源とごみの行方」という冊子を持っている手元の写真。

楽しさを入り口に、環境への気づきを広げていく

〈上勝町ゼロ・ウェイストセンター〉がスタートして4年。いま、リサイクルを楽しもうという町民発の感性は、丁寧な分別がしっかりと根付いた過疎の町から日本全国の他の地域に伝わり、真剣に循環型社会を作ろうという新たな息吹を生み出しています。

大塚

2030年までに都心の大丸有エリア(大手町・丸の内・有楽町)の廃棄物再資源化率100%を目指している三菱地所さんは、数年前からゼロ・ウェイストのヒントを探しに、我々のセンターに視察にいらっしゃいました。それがきっかけとなり、三菱地所さんでは、商業ビル内での資源循環率の向上を目指すプロジェクトがはじまったんです。私たちは、コンポストの知見の共有や、社内への環境意識啓発のお手伝いをしています。2027年度に開業予定の〈TOKYO TORCH〉街区に位置する常盤橋タワーでは、生ごみを分別して液体肥料を作る機械を導入し、その肥料を使ってまた野菜を育てて食堂やテナントに提供する、という仕組みをつくっているそうです。

田中

最近、三菱地所のビル内で、ごみ箱の「燃えるごみ」の表記を「燃やさないといけないごみ」に変えたところ、立ち止まって考える人が増えて、分別率が上がったそうなんです。また、ごみの集積所も明るくペイントし直したところ、分別への意識が高まったと聞いています。ちょっとしたことで人の意識の変化が起きるんですね。

大塚さんの写真。椅子に座って話している。

町の成り立ちや生活者の意識。そして人々の行動を変えるクリエイティブ。様々な条件が重なり合って、センターは分別とリサイクルの新たな価値を内外に発信する場になりました。色部さん、渡辺さんはどう捉えたのでしょうか。

色部

ごみを出したあとのことだけではなく、消費することについて意識することが必要ですよね。江戸時代の日本では、使用済みのあらゆるものを回収してリサイクルする人たちがいました。ドイツでは「ものを買うときは必ず同じ分だけ手放す」と子どもの頃から教わると言います。“ものを持ちすぎない”とか、“簡単に捨てない”という価値観を伝える場があると、意識を変えていけると思います。この思想は、日本館が掲げる循環のテーマに地続きのもので、まさに循環を体現している場所だと感じました。

渡辺

「ハチドリのひとしずく」という話があります。山火事が起きて、ハチドリが一所懸命口に含んだ水を吹きかけて火を消そうとする。その様子を見てほかの動物は笑うのですが、ハチドリは自分ができることをやり続ける。環境問題も同じで、上勝町の事例を一つの特殊なケースとして扱うのではなく、このアイデアや仕組みを発展させて、社会全体で取り組んでいくべき。ゼロ・ウェイストが当たり前の世の中が来るように、一人ひとりが行動していくことが必要なんだと改めて思いました。あと、最初はちょっと緊張したというか、背筋が伸びる感覚があったんですけど、宿泊してみてとにかく楽しかったです。関わった人がみんな温かくて、食事も美味しくて、純粋に素晴らしい体験でした。

色部

僕は、建築に感銘を受けました。少しでもごみを減らそうという思想がデザインに活きていて、他にはないユニークなアイデアがたくさん。

渡辺

楽しさや美しさから入って、環境への意識が変わっていく。それもまた素晴らしい価値ですよね。

色部

日本館だけではなく、様々な仕事を通して、環境への意識を変えるきっかけとなるような仕組みを作っていくべきだと思いました。

色部さん、渡辺さん、大塚さんが向かい合うように椅子に座って談笑している様子の写真。

世界へひろがるゼロ・ウェイストの輪

ゼロ・ウェイストを目指した活動をしている自治体は、上勝町だけではありません。

例えば、鹿児島県の大崎町は、リサイクル率日本一を誇ります。1998年まではごみはすべて埋め立てられていましたが、数年で埋立処分場が満杯になってしまうという強い危機感から町はごみの分別回収に取り組み、2006年にはリサイクル率80%を達成。現在もその数値を維持しています。住民・企業・行政の協力体制によって廃棄物の減量化に成功した「大崎リサイクルシステム」は海外からも注目され、今では、インドネシアへの技術移転も行われているそうです。

  • 「OSAKINI PROJECT」の看板の写真。
  • 大崎町のゴミステーションの引きの写真。無数に積まれたケースの中で2人のスタッフが作業をしている。

1枚目:大崎町が推進してきた「大崎リサイクルシステム」を土台に、循環の考え方を世界に広めるべくはじまった「OSAKINI PROJECT」。リサイクル事業のみならず、企業と協業した商品開発や空き家活用なども行っている。(写真提供:一般社団法人大崎町SDGs推進協議会)/2枚目:ごみは27種類に分別される。内17%は一般ごみ、23%は資源ごみ、60%は生ごみ・草木。資源ごみはリサイクルされ、生ごみ・草木は堆肥化されるため、埋め立てられるのは17%にとどまっている。(写真提供:一般社団法人大崎町SDGs推進協議会)

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自治体だけでなく、大企業も率先して新たな取組をはじめています。大塚さん、田中さんが話してくれた三菱地所との活動もその一つ。「サーキュラーシティ丸の内」というプロジェクトは、2030年までに大丸有エリアにおいて、廃棄物再利用率100%達成を目指しています。〈上勝町ゼロ・ウェイストセンター〉の視察をきっかけに、生ごみの肥料化の知見共有や社内の環境意識啓発において同センターと協力関係を結んでいます。さらには、同社が管理する大規模オフィスビル24棟で ペットボトルの回収を徹底するとともに、廃食用油を回収し、それを持続可能な航空燃料であるSAF(Sustainable Aviation Fuel)へ再利用する取り組みなどもはじまっています。

  • ビルのごみ集積所の写真。壁や看板などは塗り直され清潔なイメージを保っている。
  • タワーコンポストの写真。黒い円柱状の物体に「reRise」という文字が印刷されている。
  • ビニールハウスのような中で、畑に液体を巻いている女性の写真。

1枚目:三菱地所が運営管理するビルのごみ集積所。明るく塗り直したことにより、利用者の分別意識が高まった。(写真提供・設計・施工:株式会社メック・デザイン・インターナショナル)/2枚目:大手町・常盤橋タワーのコンポスト。施設から出る生ごみを液肥にし、近郊農地でその液肥を活用した農作物を育て、収穫された農作物を常盤橋タワーや三菱地所の社員食堂で提供している。(写真提供:三菱地所)/3枚目:常盤橋タワーのコンポストでできた液肥を使い、農作物を育てている。(写真提供:三菱地所)

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循環を体現する社会を実現するために

様々な立場の人が関わり合いながら、社会全体の共通善を実現するために、未来へ向けてともに歩んでいく。こうした価値を支える生活者の意識は、どうすれば社会全体で育まれ、伝承されていくのでしょうか。

上勝町の掲げる「ゼロ・ウェイスト」の価値観は、日本館が掲げる「循環」のテーマに連なっています。一人ひとりの生活者がごみを減らすことに楽しさや美しさを感じること。その習慣とアイデアやクリエイティビティが結びつき、人々を惹きつける取り組みへと進化すること。その取り組みを行政が意思を持って仕組み化すること。そして、さらに大きな社会全体のグランドデザインへと姿を変え、生活者の暮らし向上へと還元されてゆく。

これからもっと広がっていくであろう「ゼロ・ウェイスト」と「循環」の社会実装の主役は、一人ひとりの力なのです。

大塚桃奈さんの写真

大塚桃奈

田中達也さんの写真

田中達也

色部義昭さんの写真
アートディレクター/グラフィックデザイナー

色部義昭

渡辺潤平さんの写真
コピーライター

渡辺潤平

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