JUNKAN Museum 循環ミュージアム

クリエイターが描く「循環」
多様な視点、思想、表現から見つめる「循環」は、こんなにおもしろい!

アーティスト

盛永省治

5/11

藻類の光合成により長い時間をかけて酸素が増えた様子を表したイラスト。中央には地球と藻が描かれてあり左右で情報が分かれている。左半分は地球がマグマや溶岩に覆われていて、大気中には二酸化炭素が溢れている。右半分は緑の木々と青い海の地球で、大気中には藻類の光合成により発生した酸素が溢れている。
自身の作品を手に取る盛永さんを斜め前から撮影した写真。
個展の様子の写真。什器の上には木工作品が並べられている。花瓶や壺を思わせるような大きな作品や、なめらかなくぼみのあるうつわなど多様な作品が並ぶ。壁にも絵画を飾るように作品が掛けられている。
作品のクローズアップ写真。木の面にはひびが入っていたり変色している箇所がある。
個展が開催しているギャラリーの一角で、盛永さんが自身の作品のスツールに座っている様子の写真。
自身の作品を手に取る盛永さんを背面から撮影した写真。手に持った作品は一度すぼまった口がまた大きく開いた形状で、壺や花瓶を思わせる形状。ふちの部分に樹皮を残したデザインになっている。

木の個性といのちの巡りに導かれて

現在は鹿児島県日置市に工房を構え、木工作家(ウッドターナー)として活動しています。
作品は器からスカルプチャー、スツールなどを中心に、主にウッドターニングと呼ばれる、生木を回転させながら刃物で削り出していく手法で作っています。削った後に乾燥させることで、水分が抜けて木が歪み、ひとつひとつ異なる表情になって、それが作品の個性になります。

今回の作品群は、東京代官山のSISON GALLERyでの個展に向けて制作しました。これまでの作品を振り返りながら、いまの自分の技術で一つ一つのクオリティーをあげていくということに焦点を当てています。似た形のものでも、以前制作したものと違う見え方になってくれればいいな、と思いつつまとめました。
作品に使う木材は、実はこれまで一度も、普通の木材市場で買ったことがありません。木材を扱う工場から、使い道がなく燃料にされてしまうような廃材を買い取らせてもらったり、山師と呼ばれる立木の伐採や買い付けを請け負う人たちから直接丸太を購入することもあります。大きな丸太を切り出すと、思わぬ虫食いや、微生物の分解による木の変色に出合うのですが、それも樹木の生命活動の証。ひとつとして同じものはなく、それが作品の魅力につながっています。

ごみをなるべく出さないようにしていますが、工房で出る木屑などは地元の農家さんが引き取ってくれて、堆肥として畑にまいてくれているんです。意識的に取り組んでいたわけではないのですが、気がつくと無駄が出ないサイクルが生まれていました。また、古いテーブルの天板を譲ってもらい材料にすることもあります。昔の職人さんが制作し、お客さんが使い、まわり回って僕の手元に来たものを素材として使う。木工は形を変えて巡っていきます。

僕の仕事は、林業とも密接な関わりがあります。木が伐採された山には、新たに苗木を植え、次の世代が枯渇しないようにしなければいけません。遠くない将来、僕も植林作業を手伝ったり行動することで林業に向き合いたいと考えています。何十年という時間をかけて苗木から育った木を思うと、自然界の途方もない長いスパンの循環を感じます。

撮影協力:SISON GALLERy
写真:玉森敬太

盛永省治さんの写真
木工作家

盛永省治

Let’s Share!

月刊日本館をシェアして
みんなの意見を
「循環」させてみませんか?