JUNKAN Museum 循環ミュージアム

クリエイターが描く「循環」
多様な視点、思想、表現から見つめる「循環」は、こんなにおもしろい!

アーティスト

にいみひろき

3/11

無造作に積み重ねられた立方体のクローズアップ写真。全ての面に自然の中に建つ家がシルクスクリーンによって描かれている。スプレーや絵の具で着色されているものもあれば、色がない線画ものもある。
にいみひろきさんのアトリエの中に積み重ねられた立方体の作品の写真。
アトリエの写真。壁にはさまざまな色のスプレーで塗られた跡があり、ワゴンには作品に使用するスプレーがたくさん置かれている。左側には作品の一部が見える。
アトリエでにいみひろきさんが作業している様子の写真。両手にスプレーを持ち、左手のスプレーで着色している。手前には作品の一部が見える。
アトリエでにいみひろきさんが作業している様子の写真。手にはサンダーをもち作業机の前に立っている。写真の奥には作品が並んでいる。

消費されていくものに、再び命を吹き込むアート

捨てられたものや、注目されない脇役的存在に光を当てることをテーマに、コラージュとペインティングの技法で作品を制作しています。コラージュの素材は、昔のアメコミの背景(バック)や、捨てられた雑誌の広告ページなどが多いですね。デジタル上でパーツを組み合わせた絵をキャンバスにシルクスクリーンで出力して、上からスプレーや絵の具で着色しています。

アーティストとして活動しているのは約5年前からです。美術大学でグラフィックデザインを学び、アートディレクターとして広告業界に就職しました。活動をはじめる前はデジタル領域の広告代理店に在籍していたのですが、デジタル広告の世界は、とにかくサイクルが早いんです。約1〜2週間のスパンでクリエイティブがどんどん入れ替わっていく。世の中に長く残り続けるような仕事に携わりたくてデザイナーを目指したんですが、実際仕事で作った広告は1週間で消えていってしまう。制作自体は楽しかったのですが、徐々に違和感が蓄積されて、自分自身も消費されていくような気がしてしまって。その時のもやもやした気持ちが今のアート活動の原点になっています。

右も左もわからないまま、アートの世界に飛び込んだのですが、広告業界で培ってきたマーケティングの視点は、作家活動にも作用しています。職業病かもしれないですが、作品の背景や文脈をしっかり伝えるということは強く意識していますね。なぜこの形、この色を選んだのか。「なんとなく」ではない部分をきちんと提示したいんです。

現代社会では必要以上にものが溢れすぎていて、すごいスピードで生産と消費が繰り広げられていますよね。そのなかで、使い捨てられているものを拾い集めて、作品に落とし込むことで、新たな循環が生まれると思っています。循環は再びいのちを巡らせること。消費とは対極的な概念ですよね。

2023年の1月から広いアトリエを構えて、念願の大きな作品も制作できる環境が整いました。この作品は、2024年6月に東京・銀座の『GINZA SIX』のディスプレイに飾った新作で、約40個の大きな立方体に絵を描いています。アジアのアートシーンも盛り上がってきているので、長く残り続ける作品を手がけることが、アーティストとしての目標です。

にいみひろきさんの写真
アーティスト

にいみひろき

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