Feature

マンガで読むいのちの「循環」

動物が植物を食し、死に、微生物がその死体を分解し、土に還す。このいのちの循環には3つの重要な役割が存在します。

無機物から有機物をつくる植物は「生産者」、有機物を取り入れる動物は「消費者」、両者を分解する菌類などは「分解者」と呼ばれ、そのシステム全体を私たちは「生態系」と呼んでいます。地球全体を見渡せば、私たち「消費者」は生態系をなすとても小さな存在です。

いのちはどこから来て、どこへ行くのか。
漫画家の佐々木充彦さんが描きます。

オトーがミコに話しかける。「ミコ、音を立てるでねーど」 森の中を静かに歩くミコ。目線の先には鹿が。鹿もこちらに気づいた様子。
「パーン・・・」という銃声が森に響き渡る。
林道を歩くオトー。後ろから追いかけるように歩く少し悲しげな顔のミコ。 先程の銃声は鹿を見事に撃ち抜いていた。
「どーだ、今日の晩飯だと。すげーべや。」そう言いながら鹿を持ち上げるオトー。 ミコ「...うん」鹿の口からは血が滴り落ちている。 さっきまで生きていた鹿を思い返すミコ。「死んどる」
林を下りながら父親に話しかけるミコ「オトー」 「ん」そっけなく返事をするオトー。肩には鹿を担いていでいる。 ミコ「死んだらどうなる?」 オトー「消えてなくなる」 ミコ「なくなるんか」 オトー「ほーじゃ、そこでおしまいじゃ」 「おーい」遠くから二人を呼ぶ声が。
オトー「又吉か」 ミコ「又兄」 二人の前にかけよる又吉。 又吉「大ババ様が・・・早く」 目を丸くするミコとオトー。祖母に何か大変なことが起きたことを察した様子。
「消えてオシマイ?」先程のオトーとの会話がミコの頭の中に残っている。 そこは祖母の家。 目を閉じて布団の中で静かに横たわる祖母。それを囲むミコや村の人たち。
祖母は息を引き取った様子。 「おばあ」「母さま」そこにいる人たちが悲しそうに呼ぶ。 ミコが祖母の頬をそっと触る。
ヒヤっ・・・頬はとても冷たく、そのことに驚いたミコ。 オトー「冷たいか」 ミコ「・・・ウン」 涙を滲ませるミコ。 オトー「かなしいか」 ミコ「ウン・・・」
その夜。布団の中で眠れない様子のミコ。
10 「オラもいつか、死んで冷たくなって、消えて・・・オシマイなんかな」 ぼーっとしながらそう考えていると 「そんなことはないぞ」とどこからともなく声が。
ミコ「そんなことないんか」 誰かの声「ナイ」 驚いて目を見開くミコ。そこには祖母の姿が。 布団から起き上がってさらに驚くミコ。「おばあ?」
ミコ「おばあ、し、死んだんじゃ」 祖母「死んだわい。みなさい」 スッとどこかを指指す祖母。「あーやってうまっとる」 その先を見ると祖母の裸の遺体が。周りには何やら小さい生き物のようなものが集まっている。
祖母の体が少しづつ分解されている様子。たくさんの小さい生き物たちは、ぞろぞろと祖母の体の一部を運んでいる。 ミコ「あれは何をしよる?」 祖母「虫やら菌やら、ワシをたべよるの」 なにかに気づいたミコ。
小さい虫や菌をよく見ると、細胞のようなものは祖母の顔になっている。 菌「いっただきまーす」 祖母の細胞「どーぞ召し上がれ」 ミコ「ち、ちいさいおばあじゃ。あ、食べた」 祖母「ほうよ」 祖母の細胞を食べた菌は「ん〜〜」と踏ん張ると今度は「プリ」とうんちをした。 そのうんちもよく見ると祖母の顔のようだ。 ミコ「またじゃ」
虫や菌に分解され骨だけになった祖母の身体。 ミコ「おばあ、いつになったら消えるんじゃ」 祖母「だから消えんわい」
シーンは変わって土から芽が出ている。 祖母「ワシはこれから土になって。草になって。食べられて。」 鹿が草を食べている。 祖母「そして・・・」 なにかに気づいた様子の鹿。「パーン・・・」という銃声が森に響き渡る。 オトーとミコが仕留めた鹿と同じ境遇のようだ。
昼間にミコたちが鹿汁を食べている様子を見ている、祖母とミコ。 祖母「うめーか」 ミコ「うめえ」 祖母「もっとうまそうに喰いーな」 ミコ「おばあが死んだんど」 祖母「あ、そうやったのう。でも、もう悲しくねがろ?」 ミコは少し微笑んだ。「・・・。うん」 祖母「オシマイやない」
暗い世界でミコの身体の一部も分解されている。 祖母「ミコも、みんなも、ずーっとつながっとるんやから」
暗い世界からシーンは変わり天気の良い朝に。 流れる川。葉から落ちる雫。
閉じていた目を開けるミコ。寝ぼけている様子。 そして、祖母との会話が夢だったことに気づいて目を丸くする。
髪を結って急いで布団から出ると、家の外に建てた祖母のお墓へとかけ寄る。
何かを見つけてハッとするミコ。 お墓の前の土から小さな芽が出ていた。 祖母の声「ずっと」
祖母の声「つながっとるんやから」 優しい笑顔でミコの頭を撫でる祖母。後ろにはたくさんの動物たちや植物たち。  おしまい
佐々木 充彦さんの写真
漫画家/イラストレーター

佐々木 充彦

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