JUNKAN Museum 循環ミュージアム
クリエイターが描く「循環」
多様な視点、思想、表現から見つめる「循環」は、こんなにおもしろい!
アーティスト/プランツディレクター/博士(農学)
Mikiko Kamada
2/11
小さな瓶の中で巻き起こる、分解、循環の美しさ
都市の中に人間以外の生物や植物をもっと増やしていきたいという思いを中心に、研究とアート作品の制作を行き来して活動しています。
現在は、千葉大学大学院園芸学研究科の研究室に所属しています。研究室での研究内容とは異なりますが、コロナ禍に行った個展のテーマを「目に見えない微生物の存在を可視化する」ことに決めて、その中で、フラワーコンポストという表現にたどり着きました。
フラワーコンポストとは、瓶の中に花を閉じ込めて、カビなどの微生物が発生することにより分解されていく過程を可視化する作品です。
一方向の展示ではなく、時には鑑賞者を参加者として巻き込みながら、例えば持参していただいたお花を瓶に入れてもらって、継続的に経過を観察するなどの試みを行っています。また、実証実験としての意味合いも兼ねてお花屋さんで展示したりもしています。参加者にはお花を持参してもらって瓶の中に入れてもらうことで、作品を見るだけにとどまらず自分ごととして、体感的に循環の意識をインストールしてもらえるといいなと考えています。
自然は美しいだけではなく、ちょっと恐ろしいところもあるし、汚いと感じることもあります。その多様さは人にとって心地いいものだけではありません。だからこそ作品の瓶の中をあえて整えてコントロールしすぎず、一方で瓶という閉鎖された空間の中にある箱庭的な美しさ、不思議さを大切にして、自然の多面的な魅力を実感してもらえるように意図しています。
普段は目に見えない微生物が地球にとって大切な働きをしてくれているというのは、多くの人が知るところ。もしこの世に微生物がいなかったら、この地球上は植物残渣などが積もり積もって、たちまち人間が住めない環境になってしまうといわれているくらいです。
例えば山や森って、毎年落ち葉が降り積もるのに、溢れてしまうことがないですよね。秋に落ちた葉は、冬は雪の下に隠れ、春に暖かくなって雨が降ったタイミングで微生物の働きにより分解され、土となり、そしてまた植物の養分として吸収され、新たな生物の一部分として利用されます。そういういのちの循環が自然界では当たり前に起こっているんです。一方で都市の公園は、そのサイクルがなく、土が硬くなってしまっている。微生物が息づく生きた土を都市の中に増やして、みんなが当たり前に植物に触れられるようになればいいのになと思います。
循環は私たち全生物が関わること。地球上の生命全ての共同作業です。ミクロからマクロまでつながっている。大阪・関西万博には、老若男女たくさんの方が来場されるからこそ、日本館の「循環」というテーマが様々な形で届くことを願っています。
私は、アニメーション監督の河森正治さんにお声がけいただき、彼が手がけるシグネチャーパビリオン「いのちめぐる冒険」の展示にもアーティストとして参加させてもらっています。今回はチームで取り組んでいて、腐敗の様子をタイムラプスで撮影して映像にするなど、今まで一人ではできなかった新しい表現にも挑戦しています。
Mikiko Kamada
ロッカクケイLLC.代表。
千葉大学大学院園芸学研究科博士課程修了。博士(農学)。生命科学系のバックグラウンドからメーカー開発職を経て、アカデミックな側面を生かしプランツディレクターとしての活動を開始。2015年に室内緑化ツールとして、多肉植物の魅力を再現したクッション【Tanicushion®】を発表。現在は「植物とヒトの関係性」の再構築、都市における土と植物の重要性を研究しながら、ネイチャーポジティブな都市環境の構築を目指し活動している。同時に検証の一環でもある植物や微生物の存在をテーマにしたインスタレーション、作品を制作するなど表現活動も継続的に行っている。
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