JUNKAN Museum 循環ミュージアム

クリエイターが描く「循環」
多様な視点、思想、表現から見つめる「循環」は、こんなにおもしろい!

アーティスト/プランツディレクター/博士(農学)

Mikiko Kamada

2/11

2つのガラス容器に入った赤い花のアレンジメント。左の容器には枯れた花と葉があり、右の容器には鮮やかな赤い花が詰まっている。どちらの容器も木製の台の上に置かれている。
ガラス容器の中に詰められた赤い花のアレンジメントのクローズアップ写真。
ガラス容器入った赤い花のアレンジメントと、その横に作品の作者であるMikiko Kamadaさんが黒い服を着て立っている。窓際に立っており、レースのカーテン越しに柔らかい自然光が差し込んでいる。
ガラス容器の蓋の上に緑色のテープが貼られており、『Test 1 25°C 2023.8.2』と手書きで書かれている。蓋の裏側には水滴がついている。
ガラス容器の中に、糸状菌が生えた茶色の花や葉が見える。

小さな瓶の中で巻き起こる、分解、循環の美しさ

都市の中に人間以外の生物や植物をもっと増やしていきたいという思いを中心に、研究とアート作品の制作を行き来して活動しています。

現在は、千葉大学大学院園芸学研究科の研究室に所属しています。研究室での研究内容とは異なりますが、コロナ禍に行った個展のテーマを「目に見えない微生物の存在を可視化する」ことに決めて、その中で、フラワーコンポストという表現にたどり着きました。

フラワーコンポストとは、瓶の中に花を閉じ込めて、カビなどの微生物が発生することにより分解されていく過程を可視化する作品です。
一方向の展示ではなく、時には鑑賞者を参加者として巻き込みながら、例えば持参していただいたお花を瓶に入れてもらって、継続的に経過を観察するなどの試みを行っています。また、実証実験としての意味合いも兼ねてお花屋さんで展示したりもしています。参加者にはお花を持参してもらって瓶の中に入れてもらうことで、作品を見るだけにとどまらず自分ごととして、体感的に循環の意識をインストールしてもらえるといいなと考えています。

自然は美しいだけではなく、ちょっと恐ろしいところもあるし、汚いと感じることもあります。その多様さは人にとって心地いいものだけではありません。だからこそ作品の瓶の中をあえて整えてコントロールしすぎず、一方で瓶という閉鎖された空間の中にある箱庭的な美しさ、不思議さを大切にして、自然の多面的な魅力を実感してもらえるように意図しています。

普段は目に見えない微生物が地球にとって大切な働きをしてくれているというのは、多くの人が知るところ。もしこの世に微生物がいなかったら、この地球上は植物残渣などが積もり積もって、たちまち人間が住めない環境になってしまうといわれているくらいです。

例えば山や森って、毎年落ち葉が降り積もるのに、溢れてしまうことがないですよね。秋に落ちた葉は、冬は雪の下に隠れ、春に暖かくなって雨が降ったタイミングで微生物の働きにより分解され、土となり、そしてまた植物の養分として吸収され、新たな生物の一部分として利用されます。そういういのちの循環が自然界では当たり前に起こっているんです。一方で都市の公園は、そのサイクルがなく、土が硬くなってしまっている。微生物が息づく生きた土を都市の中に増やして、みんなが当たり前に植物に触れられるようになればいいのになと思います。

循環は私たち全生物が関わること。地球上の生命全ての共同作業です。ミクロからマクロまでつながっている。大阪・関西万博には、老若男女たくさんの方が来場されるからこそ、日本館の「循環」というテーマが様々な形で届くことを願っています。
私は、アニメーション監督の河森正治さんにお声がけいただき、彼が手がけるシグネチャーパビリオン「いのちめぐる冒険」の展示にもアーティストとして参加させてもらっています。今回はチームで取り組んでいて、腐敗の様子をタイムラプスで撮影して映像にするなど、今まで一人ではできなかった新しい表現にも挑戦しています。

Mikiko Kamadaさんの写真
アーティスト/プランツディレクター/博士(農学)

Mikiko Kamada

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