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【GI基金とは? -前編-】どんな未来を叶えよう? “ワクワク”の力で未来をつくる「GI基金」

地球温暖化の主な原因とされる「温室効果ガス」。このまま増え続けると異常気象や食糧危機などのリスクが高まると予想されていて、地球規模での対策が急がれています。その中で、経済活動による“排出”と森林保全や植林などによる“吸収”の量を均衡にして排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」への取り組みが各国でスタート。日本では2050年までの達成を目標として掲げています。
とはいえ一人ひとりの生活者が努力や我慢を続けたり、個々の企業・団体がバラバラに取り組んだりするだけでは、目標達成は不可能。民間企業や団体が垣根を超えて手を取り合い“社会全体のあり方”そのものを見直すことが必要なのです。そこで国は民間企業・団体の野心的な挑戦を後押しするために「グリーンイノベーション(GI)基金」を創設。この基金によりすでに実現しつつある先端技術もあり、そのいくつかを大阪・関西万博の日本館で実際に見たり感じたりすることができます。
今回の記事では、「GI基金事業とは ?」にフォーカス。何のために始まった基金 ? これによってどんなことができるの ? について解説します。
GI(グリーンイノベーション)基金とは?
2050年までにカーボンニュートラルを達成するために、CO₂削減と経済成長を両立させる目的で2020年に新たにつくられた基金。中小企業やベンチャー企業だけでなく大学や研究機関なども対象とされていて、研究開発・実証から社会実装までを10年間継続的に支援。採択された企業・団体には、研究開発の成果を着実に社会で展開するために長期的に粘り強く取り組むことが強く求められます。
温暖化対策は待ったなし! 私たちの生活にすでに迫りつつあるリスクとは
「温室効果ガス」とはCO₂やメタンガス、N₂Oなどを指します。産業革命以降、人類の排出する温室効果ガスの量が急増。過去の気温変化が5000年かけて7℃(100年あたり0.14℃)だったのに対し、最近100年の温度上昇は0.74℃。ついに2024年の世界平均気温はこれまでもっとも暑かった2023年を上回り、過去最高に。産業革命以前からすでに1.5℃も上昇しているのです。産業革命によって人類がより多くのエネルギーを使うようになり、温室効果ガスの排出量が一気に増えたためだと指摘されています。
ガソリンを使う自家用車、化石燃料による電力で動く家電製品などの利用以外にも、スーパーに並んでいる食品も「原材料をつくる」「加工する」「輸送する」などのプロセスでエネルギーが使われているため、私たちの何気ない日々の消費行動も温室効果ガスを発生させていると言えます。

実際に地球温暖化の影響は、さまざまなカタチで現れ始めています。海面上昇により南太平洋にあるキリバスやツバルなどの小さな島国で浸水が進み、将来は住む場所がなくなる危機に直面しています。また気候変動により、農作物の収穫量や漁獲量が減少。深刻な食糧危機が起こるリスクがあります。また温暖化により台風やゲリラ豪雨などの異常気象の発生も頻繁に。熱波や洪水による被害、暑さ・寒さによる健康被害も増加傾向にあります。

カーボンニュートラル達成への厳しい道のり。「我慢や苦労」ではなく「成長の機会」に発想を転換!
温室効果ガスの削減が強く求められる一方で、それらの環境問題対策の多くは、民間企業にとっては「コスト」になると捉えられるケースもあります。環境に配慮した商品開発や生産工程の変更には人件費や設備投資費がかかり、それらの費用を回収するのに時間がかかるためです。そこで環境問題対策を「コスト」ではなく「成長戦略の機会」として捉え、これまでのビジネスモデルや戦略を根本的に変えようとする前向きな企業の挑戦を国が全力で支援するために創設されたのが、今回取り上げる「GI基金」なのです。
GI基金は2020年度からスタートし、実際にワクワクするような事業が多く生まれています。実はそれらの中には、日本館で実際に見たり感じたりできる新技術や研究成果も含まれているのです。
わたしたちが普段生活する上であまり馴染みのない「GI基金」ですが、社会を変革する力を生み出す原動力としてさまざまな場面で活用されています。後編では、事業に採択された中で日本館の展示に関わる4つの企業・団体にインタビュー。それぞれの取り組みの経緯や担当者の思いをたっぷりご紹介します。
文:おき ゆきこ